大判例

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名古屋高等裁判所 昭和29年(う)224号 判決

所論に鑑み調査するに、本件起訴状(記録第四丁、起訴状の誤記訂正申立書により訂正せられている)には公訴事実として、被告人の清酒並に醪の無免許製造と無免許製造の清酒譲渡の事実を摘記しているが所説の通りいずれもその原料の種類、量目を明かにしてはいない。ところでこの種公訴に於ては使用原料の種類を記載するを例とし、進んではその量目や仕込日時まで記載する例も乏しくないが右は原料の種類が製品たる酒類の種類を決定し、酒造法によりその税額相当額乃至は犯情に影響するところがあり原料の量目また犯行の態様、規模を明かにすると同時に所論にもいう如く犯行の確定を容易ならしめる一面があるに由来するものと考へられる。ところで記録によると本件清酒、醪は公訴事実第三の渡辺千尋に譲渡せられたものゝ中同人の飲用した分以外、すべて大蔵事務官の手により被告人方居宅内外で差押えられていてその量目は明かであり、その後検定により夫々清酒若は醪と認定せられたものであるが、被告人は終始犯行を否認し、関係者の供述等によつても右製造経過の詳細を明かにすることを得なかつたもので、かゝる事実関係に於て酒税法に違反する酒、醪の無免許製造の公訴を提起し得ないものとは解されず、また右製造原料の種類量目を認定していないからといつて必ずしも所論の如く既判力の範囲を定め、一事不再理の原則を適用するについて、格別の支障があるとは認め得ないので、本件起訴状の公訴事実につき、訴因の明示を欠く違法があるとの論旨は遂に採用するに由ないところといわねばならない。

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